硯には蝌蚪千匹を放つ墨 一人
読めましたか?蝌蚪は「かと」と読みます。おたまじゃくしのこと。硯にたっぷりと墨をすります。硯の海に墨汁が満々とたまります。真っ黒なおたまじゃくしを描いてみます。描いても描いても墨はまだまだ残っています。この分なら千匹くらい描けそうだ、そんな気分の一句です。
さて俳句の世界にはこうした難読季語が沢山あります。「覚えておきたい 極めつけの名句1000(角川学芸出版)」から、いくつかご紹介しましょう。あなたはいくつ読めるでしょうか。
金縷梅→まんさく
鹿尾菜→ひじき
いずれも春の季語です。特に「ひじき」のような海草の仲間は、俳人でも頭を抱えるような難読季語が多いのです。
海雲→もずく
海髪→うご 刺身のつまにします。
夏の季語の
鱚→きす
鱧→はも
この辺はお寿司屋さんの湯飲みに書かれているのでご存知かも知れませんね。
沢瀉→おもだか 水辺の植物ですが歌舞伎ファンにはお馴染みですよね。「沢瀉屋」は市川猿之助一門の屋号。見事な宙乗りに「よ、沢瀉屋!」。さあ、どんどんいきますよ。
秋の難読季語は
牛膝→いのこずち
新松子→しんちぢり まだ青い松かさのこと。
白膠木紅葉→ぬるでもみぢ
そして冬の季語は見るからに寒々しい感じ。
嚔→くさめ
皸→あかぎれ
虎落笛→もがりぶえ。柵や竹垣などに吹きつける強い風が発する笛のような音です。
俳句を始めるとこうした難しい季語が読めるようになり、やがて書けるようになります。得意になってわざと詠みこんだりもするようになります。すらすら書けるとかっこいいのが薔薇。「ばら」とも「そうび」とも読みます。二音三音を使い分け五七五にあてはめるのです。季語ではありませんが、顎は「あご」「あぎと」「おとがい」。二音三音四音と使い分けが可能。背は「せ」「せな」「そびら」、ただし俳句以外で「そびら」と言っても多分通じないと思いますが。