抱かれて子猫のかたち定まらず 片山由美子「飛英(2019.9.25)」
動物のこどもは可愛いもの。子猫であればなおさら。そっと抱いてみたくなります。しかし子猫は嫌がって体を動かします。腕からこぼれそうです。この状態、あなたならどう言い留めますか?動き回る。むずかる。暴れる。くねくねする。私の月並みな脳みそでは、こんな動詞しか思いつきません。「かたち定まらず」とはなかなか言えないのです。ではなぜこの措辞がすごいのか。客観的だからです。動き回るやむずかるでは、活発な様子や、嫌がるところまでは想像できますが、具体的な動作まで踏み込んでいません。自分で言い換えの言葉をあげてみることで、この句のすごみがわかることでしょう。作者は写生とは言葉の発見と述べていますが、まさにその通り。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」