俳句を始めたばかりの方は、大抵三行に分かち書きします。
柿くへば
鐘が鳴るなり
法隆寺 正岡子規
こんな具合。テレビ番組でも大抵三行書きです。私の担当する番組でもそうしています。しかし、厳密に言えば正しいやり方ではありません。
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
正しくは一行縦書きです。
では何故、三行書きが流布しているのでしょう。もしかしたら教師の皆さんのおかげかも知れません。あなたは子規の句をどこで習いましたか?教室で、国語の授業で、先生が板書して。その通りです。黒板は横長です。一行書きにすると左右が余ってしまいます。余白を減らすために三行に書くようになったのでしょう。
ではテレビは?現在のテレビの横対縦の比は16:9。黒板と同じように横長です。一行に書くと字が小さく、読みにくくなってしまいます。視聴者には小さな字が読みにくいという方が沢山いらっしゃいます。そこで、やむをえず三行書きにして字を大きくしています。正確さを取るか、見易さを取るか、究極の選択です。このように三行書きには理由がありますが、だからと言って理想型という訳ではありません。大人になればわかりますが、世の中とはこうしたものです。
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺
付け加えると、五七五のあいだに空白の一舛を入れる人もいますがこれも誤りです。続けて書くのが正解。それも縦一行。SNSで横書きしている私がいうのもナンですが。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」