- 重箱に鯛おしまげて花見かな
- 山住の友尋ねけり西行忌
- 魚提て松やまゆけばきじの声
- くれるまで我もすみれの上にゐて
- あふむけば口いつぱいにはる日かな
- 巣をたちて鳥の心はあともなし
- ゆくはるやおく街道を窓のまま
- 顔鳥に顔を並べて長閑なり
- 春の夢さめて隣のはなしかな
- 夏めきて人顔みゆるゆふべかな
- 白雨や安居の沓の流れ去
- 若葉して仏のお顔かくれけり
- 蛸壺に松の落葉の溜りけり
- 咲きのぼる梅雨の晴間の葵かな
- 蠅打つてつくさむと思ふ心哉
- 形式に脱いで捨てけり麻袴
- 夜の音は恨むに似たり虎が雨
- 子供等よ戻りにくれん千団子
- 売家の隣に住みて今朝の秋
- 元日も過ぎゆくくさの扉かな
- 黒子袖焚きほこりして福湧し
- 薺うつ江戸品川は軒つゞき
夏目成美 プロフィール
夏目 成美(なつめ せいび、寛延2年1月10日(1749年2月26日) - 文化13年11月19日(1817年1月6日))