- 大仏の屋根を残して時雨けり
- 行く春や海を見て居る鴉の子
- 葺(ふき)かへて今やむかしの菖蒲(あやめ)草
- いつとなくほつれし笠やあきの風
- 掃捨てて見れば芥(あくた)や秋の霜
- 物いはば声いかならん女郎花
- ながらへて枯野にかなしきりぎりす
- 涙ぐっみて馬もいくなり枯野原
- 秋きぬと人に見せばや草枕
- 今一里ゆく気になりぬきじの声
- 夢見るも仕事のうちや春の雨
- 長き夜やおもい余りて後世(ごせ)の事
- 朧夜の底をいくなり雁の声
- もとの身のもとの在所や盆の月
- 虫なくややがて塩たく柴の中
- やけし野の所どころやすみれぐさ
- 生るものをあつめてさびしねはん像
- 夕顔や馬のもどりをまちてさく
- 行燈の日なたへ出せよつづれさせ
- はらりはらり萩ふく音やびはのうみ
- ながらへて枯野にかなしきりぎりす
- 姫の子もあるか竹の子売る翁
- 七草や起きねばならぬたたきそう
- 背と腹はさすがにかはるなまこ哉
- 目にも立人目も忍ぶ頭巾哉
諸九尼 プロフィール
諸九尼(しょきゅうに、正徳4年(1714年) - 天明元年9月10日(1781年10月26日))