ひなたぼこ「日向ぼこ(冬)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

日向ぼこ瞑(めつむ)ればより明るくて 正木ゆう子「羽羽(2016.9.23)」より

子供の頃のことを思い出しました。目を閉じて太陽の方に向くと、瞼の裏がオレンジ色に輝いて見えます。やがてオレンジの光の中に、小さな泡のようなものが流れていることに気づきました。あるものは固まって、またあるものは別々に。いずれも同じ方向へ動いてゆきます。小さな虫かとも思い不安になったものです。後に、網膜の毛細血管を流れる赤血球だと教わりました。一時は納得したのですが、あんな小さな血球を肉眼で見られるものでしょうか。ものは目を開いて見るものなのに、目を閉じて見る、ということがいくら考えても不思議でなりません。作者も、そんな小さな発見に思いを馳せた一人なのでしょう。子どもの頃の感覚は普段眠っていますが、あるきっかけで目覚めることがあります。この句は忘れていたあの不思議な冬の午後に、私を連れ戻してくれました。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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