追悼のラヂオ番組遠き雷 小島一慶「入り口のやうに出口のやうに(2019)ふらんす堂」
永六輔さん逝く、という前書きのある句。遠雷とラヂオの取り合わせが絶妙です。追悼の番組の最中にノイズが入ります。雷は電気ですから、電波に影響を与えます。まるで故人が空の上で返事しているように、遠雷の相槌が止まりません。作者はアナウンサー歴五十年。俳句歴は十二年目と後書きにありました。それだけのキャリアであれば、芸能界での交友の広さも相当なものでしょう。東京柳句会で毎月俳句を詠み、ラヂオ出演をライフワークにしていた永六輔さん。永さんを偲ぶにふさわしい方が、もっともふさわしい俳句という形式で行った追悼。こういう時、俳句は余計な情緒を排除して、潔く清潔です。そして、追悼句を詠んだ一慶さんご自身がいま、帰らぬ人に。空の彼方で永さんと俳句談義を交わしているのでしょうか。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」