おこしえ「起し絵(夏)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




起し絵の中に浴びたき波すこし  櫂未知子「カムイ(2017)ふらんす堂」

起し絵とは、錦絵を切ってジオラマ風に組み立てたもの。芝居の一場面や風景、名所などの図柄が用いられます。立版古とも言いますが、かつては夕涼みの余興として家の前に展示されたそうです。作者はご自宅に季語のコレクションをもっていて、その中に起し絵もありました。ある時番組で紹介するため、スタジオまで持ってきていただいたことがありました。超大作でタクシーにやっと乗る大きさだったことを覚えています。組み立てるのにかなりの時間を要したとおっしゃっていました。図柄は平知盛が碇を背負って入水する「義経千本桜大物浦(だいもつのうら)」の段。

この句の起し絵も波が描かれているようですから、あの時の大物浦かもしれません。もともと夕涼みに用いられたもの。描かれた白波が、確かに涼しさを増してくれていました。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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