パンジー「(春)植物」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

パンジーのかけ水尿素一つまみ 竹村翠苑「豊かなる人生(2020)朔出版」

パンジーはご存じですよね。三色菫とも呼ばれ、ヨーロッパ原産の園芸品種です。作者は長野県で農業を営む女性。1922年生まれと言いますから、今年百歳!

今も現役で農業と俳句に励んでいらっしゃるようです。尿素という言葉が出てくるのも農家ならでは。私など皮膚の潤いを保つハンドクリームくらいしか思いつきませんが、作者は肥料として利用しています。ネット情報では「尿素の窒素成分は46%と含有率が高く、植物に対して非常に効果的な肥料」とのこと。では窒素とは、というと「葉肥(はごえ)とも呼ばれ、生育の初期に効果的とされています。小さな茎が育ち、元気に葉を広げてくれるかどうかは、土壌にどれほどの窒素が含まれているかに左右されます」だそうです。なるほど。では、なぜ窒素が植物にいいのか?「DNAやアミノ酸の原料になり、光合成に欠かせない葉緑素も窒素によってつくられます」

ここまで読んでくださったあなたは、呆れているかもしれませんね。「こいつ、本当に農業や園芸に無知なんだな。そんなこと調べなくても誰でも知っているよ」と。はい、そうなんです。だからこそ、リアリティのある農業や園芸の句には、ころっとやられてしまいます。掲句のパンジーは経験豊かな作者に丹精されて見事な花を咲かせていることでししょう。

もうひとこと言えば、句集のタイトルが印象的。「プルーン捥ぐこの豊かなる人生よ」という自作からとったようですが、豊かなる人生とはなかなか言えません。作者の百年に乾杯!

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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