俳句は五七五の十七音で出来ています。同じ十七音でもリズムの違うものがあります。次の句を見てください。
海暮れて鴨の声ほのかに白し 松尾芭蕉
うみくれて 五音
かものこえ 五音
ほのかにしろし 七音
五五七となっています。文節の切れ目と句の切れ目(五七五)が一致しないものを句またがりと呼びます。五五七のまま読んでもよいのですが、
うみくれて 五音
かものこえ・ほの 七音
かにしろし 五音
意味の切れ目を意識しつつも五七五のリズムを前提に「・」のところにわずかなすき間をあけるやり方もあります。こちらはやや高度なやり方。NHKはおおむね五五七。意味の切れ目で区切るようにしています。初心者のうちは、臆してなかなか句またがりに挑戦できません。少々経験を積むと、得意になってやたらと用いるようになりますが、俳句はあくまで内容次第。中身のない句に句またがりを用いても、それで評価が上がるわけではありません。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」