天上の人の愛でたる茎の石 西村麒麟「鴨(2017)文學の森」
茎の石は茎漬けの漬物石のこと。天上の人が愛でるとは、どういうことでしょうか。この句の一つ前にそのヒントがあります。
鳥好きの亡き先生や冬の柿
鳥好きの恩師を詠んだ句です。庭の柿の実を全部収穫するのではなく、鳥たちのために少し残しておいたのでしょうか。恩師の優しさが偲ばれます。先生は、鳥だけでなく自家製の漬物も愛していたのでしょう。もしかすると、自分で漬けていたのかもしれませんね。漬物だけは妻に任せず、自分でという方はときどきいらっしゃいます。関東大震災の折、ぬか床を持って逃げたという作家もいました。手塩にかけたぬか床は、何よりも貴重なものなのですね。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」