唐辛子売るや辛さを詫びながら 小池康生「奎星(2020)飯塚書店」
東京の縁日では七味売りをよく見かけます。屋台では威勢が大事ですから、口上を手慣れたもの。「辛くてごめんね」などと言いながら売りたてます。その口上に乗せられて、ついつい必要ないものまで買ってしまったことはありませんか。家に帰ったら去年の七味唐辛子が、きっと残っていることでしょう。そう、要らない買い物をするのは大抵亭主。普段料理なんてしないから、調味料の何が足りないなんてことはご存じないのです。唐辛子の赤い色と、口上の楽しさ、そして余った唐辛子の入れ物が頭に浮かぶ一句です。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)