ぼうだい 傍題【ワンランク上の俳句百科 新ハイクロペディア/蜂谷一人】




例えば、桜を歳時記で調べるとたくさんの傍題が載っています。時間に関するものを拾い上げると、朝桜、夕桜、夜桜。同じ花が、時間を違えるだけで別の季語になってしまう不思議。それぞれの情緒の違いを味わってみてください。

花見より帰る近所の夕桜   岩田由美

こちらの句は夕桜。朝桜、夜桜と季語を入れ替えてみましょう。ほらね。やっぱり夕桜でなければならないようです。無粋を承知の上で、その理由を考えてみましょう。おそらく花見してきた方は桜の名所。花衣に着替えて賑やかに、少々お酒なんかも入ったのかもしれませんね。一方、夕桜の方は近所の、とわざわざ断っていますから自宅の近く。豪華な花見から花疲れして帰ってきたら、そこにも見事な桜があったよ、というのです。やっぱり夕桜の「夕」がきいています。花見の後ですから、もう夕方。夜桜ほどの艶やかさはなくて、もっとさっぱりしています。近所によそ行きではない普段の良さを見つけたよろしさ。フランス料理に食べ飽きてお茶漬けが恋しくなる感覚とでも言いましょうか。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

 

 

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