おんびん 音便【ワンランク上の俳句百科 新ハイクロペディア/蜂谷一人】




音便とは、言葉の一部が脱落して元の音と違ったものに置き換わる現象のこと。こういうと難しそうですが「咲きて」が「咲いて」となったり、「早く」が「早う」、「飛びて」が「飛んで」、「知りて」が「知って」に変わることはよくご存知でしょう。ちなみに、咲いてはイ音便、早うがウ音便、飛んでは撥音便(はつおんびん)、知っては促音便(そくおんびん)と呼ばれます。日本語ネイティブのあなたなら、問題なく使いこなしているはず。俳句でよく問題になるのは、次のようなケースです。

問題 動詞「食ふ」に助詞の「て」をつけてください

答え 食ふて

ブー!間違い。正しくは「食うて」。つまりウ音便にしなくてはならないのです。番組に寄せられる投句でも、沢山の方がやらかしています。櫂未知子さんは「ふて寝は駄目よ」と教えていらっしゃいます。文語では動詞に「ふて」がつくことはありません。必ず「うて」としなければならないのです。では次の問題。

動詞「引く」に助詞の「て」をつけてください。

答え 引ゐて

ブー!間違い。正解は「引いて」。「引きて」が「引いて」となるイ音便です。簡単に答えればいいのに、さんざん悩んだ挙句「ゐ」を選択する方、結構いるんですよ。老若男女関係なし。年配の方でも平気で間違えた句を送って来られます。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

 

 

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