かふんしょう「花粉症(春)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

スタジオのコードうねうね花粉症  長嶺千晶「雁の雫(2015)文學の森」

花粉症は新しい季語。花粉の飛散期に目のかゆみ、充血、流涙、くしゃみ、水様鼻汁、鼻閉(鼻詰まり)など、目・鼻アレルギー症状を呈するものをいうと日本大百科全書に記されています。症状を書き写すだけで、目や鼻がむずむずしてきます。スタジオにもいろいろありますが、テレビのスタジオは案外埃っぽく居心地のいい場所とは言えません。カメラケーブルが掲句の通り、蛇のようにうねうねと這いずり回ります。埃っぽい不快感が、確かに花粉症を連想させます。しかも早春の野原のように寒い。大道具用の出入り口が開いているので、シャッターを閉めても隙間風が止まりません。花粉症とスタジオの取り合わせは珍しいと思いますが、作者はいいところを見ていると思いました。

ところで、そんなスタジオでアナウンサーの人たちは仕事をしなければなりません。中には花粉症の方もいて、私と仕事をしていたある女性アナウンサーは、打ち合わせの時からティッシュの箱を持ち歩いていました。もちろん処方された薬を服用し、ヨーグルトとか甜茶とかDHAとかビタミンD3とか、いいと聞いたものは何でも試していました。しかし、症状はおさまりません。それなのに、本番になると何故かぴたりとくしゃみが止まる。三年にわたってご一緒しましたが、その不思議に毎回驚かされたものでした。どうやって、くしゃみを止めているのか。精神論は苦手な私ですが、結局のところ「気合」という言葉に落ち着くのかもしれません。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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