夕河鹿セブンイレブンまで三里 石田郷子「草の王(2015)ふらんす堂」
河鹿は山間のきれいな谷川に棲息しているアオガエル科の蛙。ヒョロヒョロ、フィフィフィ・・・美しく豊かな声で鳴くと、歳時記に。水のきれいな谷川のシンボルのような存在です。温泉地などでの夕涼みの時間、この声が聞こえると心が清々します。コンビニまで三里、十二キロとは相当鄙びた場所。便利さを犠牲にしても、豊かな自然の中に暮らすことを選んだ作者。「毎朝のように霧に覆われ、野生の動物たちの気配が濃厚なこの谷間の地で、これからも椋(結社名)の人たちとともに俳句を作って行きたいと思います」と句集の後書きに記しています。さて、私が以前アメリカに旅行中のこと。コロラドの山中のツイン・レイクスという場所に泊まったことがあります。モーテルで夕食について尋ねると、主人は「レストランならここから30マイル行ったところだよ」と、こともなげに答えました。えええ!?30マイルって50キロですけど?夕食に往復100キロですかあ?でも空腹には勝てず、レンタカーのエンジンをかけて向かいましたよ。翌朝、宿の前の山にマウンテン・ゴートの群れが姿を現しましたとさ。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html