よみせ「夜店(夏)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

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宝石と呼んで夜店のゼリーかな   高田正子「青麗(2014)角川学芸出版」

縁日に欠かせない夜店。金魚すくいや風船釣り、スーパーボール。りんご飴、射的、焼きそばに綿飴。書いているだけで懐かしさが込み上げてきます。コロナ禍で夜店の出店も制限され、長いこと目にしていません。昔ながらのものだけでなく、ケバブなどの新顔も目立つようになりました。そんな中にゼリーもあるのでしょう。一口サイズで色とりどりのフルーツゼリー。丸い穴の空いた箱の中にそれが詰まっていて、手を突っ込んで掴み取りします。掴めただけ貰えるので、つい欲が出ます。沢山取ろうとしてかえって落としてしまったり。多くの子どもたちの欲望と失望が混じり合う現場です。あのゼリーは昼間見ても毒々しいだけ。でも夜になると魔法がかかったように、魅惑の食べものとなります。掲句は宝石という言葉で、色と輝きが目に映る仕掛け。夜店の裸電球には、ここではないどこかへ私たちを連れ去る力があるようです。

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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