- 鰆は青くて人にずつしり重い一ぽん
- 雲のうごく夏みかんみな大きく熟れる
- 魴鮄の一ぴきの顔と向きあひてまとも
- 鏡に映つたわたしがそのまま来た菊見
- 掌がすべる白い火鉢よふるさとよ
- 乳母は桶の海鼠を見てまた歩いた
- 胴長の犬がさみしき菜の花が咲けり
- 秣の一車のかげでささやいて夏の日が来る
- 単衣著の母とあらむ朝の窓なり
- 刈粟残らずをしまつて倉の白い
- 赤ん坊髪生えてうまれ来しぞ夜明け
- 畠ぎつしり陸稲みのり芋も大きな葉
- げに蓬門炎天の一客を迎へ
中塚一碧楼 プロフィール
中塚一碧楼(なかつか いっぺきろう、1887年(明治20年)9月24日 - 1946年(昭和21年)12月31日)