二十四節気の一つ立夏。夏の始まりを示す言葉で、大体こどもの日の頃にやってきます。「りつか」と三音なので、かなをつけて下五に置かれることが多い季語です。「夏に入る」「夏来る(きたる)」という五音の傍題を使えば上五や下五に置くことも可能。番組に寄せられる投句のほとんどが上五か下五に置いていました。では、ここからが問題です。中七に置くことは出来るでしょうか。答え。「立夏の○○」という形にします。立夏の海。立夏の山。立夏の風。こうすると中七に置ける上に、「立夏の」と限定するので季語が動かないという利点があります。ちなみに番組の入選句は9つ。うち一句だけが中七に置いていました。
掌に立夏の海の一雫
手に海の水を掬ったのでしょうね。掌という肉体の一部を出して、身近に引き寄せ、そこから立夏の海という対照的な大きな自然を詠いだす。技巧的でありながら、おおらかですっきりとした叙情を湛えています。
季語は音数によって位置く場所が限定されてしまいますが、少しの工夫をすることによって、自在に使えるようになります。まさにワンランクアップの季語の用法。井上弘美さんに教えていただきました。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html