文語では形容詞の活用に「かり」がつくことがあります。否定の「ず」や切れ字の「けり」を伴う場合などに用います。
たとえば「多し」の場合
多からず(未然) 多かりけり(連用)
「うれし」ならば
うれしからず(未然) うれしかりけり(連用)
馴染みが薄いせいか、投稿などに多くの間違いが見られます。よくあるのが「うれしけり」という表現。正しくは「うれしかりけり」としなければなりません。さらに「かり止め」にも注意。「かりけり」としなければいけないのに、字数の関係からか「かり」で終わってしまっているケースも多々見られます。石川啄木の有名な歌
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
にも用いられている表現ですが誤用。名歌だからといって無条件に信用してはいけません。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html