助詞は螺子の役割。名詞や動詞、形容詞といった俳句の部品をつなぎます。螺子穴にあっていなかったり、脱落していたりするとさあ大変。一句が成り立ちません。次の例を見てください。
運動会午後へ白線引き直す 西村和子
運動会午後に白線引き直す
「午後へ」と「午後に」、一字違うだけですが大きく意味が変わります。午後へ、は午後に向かっての意味。昼休みに午後の競技の準備をしている光景です。一方、午後にだと、午後になってから白線を引いている光景。競技はもう始まっていて、準備作業が間に合っていません(笑)
勿論、この句は「午後へ」でなくてはなりません。一字の助詞が句の価値を高めもすれば、台無しにもするという好例です。助詞をうまく使いこなせるかどうかが俳句上達の別れ目。俳句女子のみなさん、女子力とともに助詞力のアップが大切ですよ。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html