バスケットボールの固さ風光る 西山ゆりこ「ゴールデンウィーク(2017)朔出版」
バスケットボールを初めて触った時、その固さに驚きました。小学校で触れたドッジボールはそんなに固くなく、大きさも手頃でした。それが中学校に入るとバスケットボールの授業があり、その固さ重さ大きさに圧倒されたものです。年代や性別で大きさや重さが異なり、一般男子用及び中学生用(男子)は7号球(周囲75−78センチ、重量600−650グラム)と決められています。大人と中学生が同じボールを使うのですから大きく重く感じるはずです。そしてあの固さ。ルールによればボールの下端が1.8メートルの高さから落とした際、上端が1.2−1.4メートルの範囲で弾むよう、空気圧が調整されているそうです。これは相当の空気圧。かなりの固さになります。
掲句の季語は風光る。「春になって日差しが強くなると、吹く風もまばゆく感じられる」と歳時記に。本来目に見えないはずの風に眩さを感じ、「風光る」と表現した昔の人のセンスには脱帽です。屋外の季語ですから、この句は体育館ではなくストリートバスケの一場面かもしれません。それともアメリカの家のように車庫の前にゴールが設けられているのか。主人公は固くて重いボールに驚きながらも、春の到来を喜んでいるのでしょう。もしかしたら新入生かもしれません。時が進むにつれ、固さにも慣れむしろ扱いやすく感じるようになってゆくはず。春の初々しさを、ボールの固さに託して詠んだ句。私も少年時代を思い出して幸福な気持ちになりました。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html