籐椅子に深く座れば見ゆるもの 星野高士
籐椅子は籐製の夏用の椅子。最近は珍しくなりましたが、昔は避暑地のホテルや別荘でよく見かけました。クラシックな家具のひとつです。大抵は庭や海に面していて、深く座れば、ゆったりと寛いだ気分になります。聞こえてくるのは囀りでしょうか。それとも潮騒でしょうか。確認したわけではありませんが、この句は本歌取りなのではないかと思っています。私の頭の中にあるのはこちらの句。
籐椅子にあれば草木花鳥来 高濱虚子
虚子は作者の曽祖父。偉大な曽祖父へのオマージュであるとともに、同じ道で生きていきますよという覚悟を示した句のような気がしてなりません。となれば、籐椅子で作者が見ているものは草木花鳥。つまり、俳句の精神そのものではないでしょうか。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html