じふぶき「地吹雪(冬)天文」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

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地吹雪の熄みたる銀河山河かな  黒田杏子「銀河山河(2013)角川書店」

句集のタイトルとなった一句。地吹雪とは「雪が降る時に激しい風を伴うもの。降り積もった雪が風に吹き上げられるもの」と歳時記に。激しかった吹雪がやんだあと姿を現したのは星空。そして夜目にも白い山々。銀河山河とは作者の造語でしょうが、雄大で透徹した景色を思い浮かべます。

作者は句集の帯にこう記しています。この國の「百観音」と「四國八十八カ所」を巡拝、櫻の木々を巡って、大きな励ましを賜ってきました。国宝の一遍絵巻の跡も辿ってきました。発心のすべてが満行・結願に至りましたいま、あらためて遊行上人一遍の言葉「捨ててこそ」がこの身と心に染みわたります。

何かを追い求めてきた作者が、晩年にたどり着いた境地がこの一句なのでしょう。地吹雪に象徴されるのは激しい人生。そこに現れた銀河山河はひとを越えた世界。掲句には作者の死生観が凝縮されています。人が逝ったあとも、そこにあり続ける星と山。しずかでけがれのない光です。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(冬)

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