何故か、その言葉を詠みこむと名句ができないとされる言葉があります。例えば 孫、帰り道、露天風呂、飛行機雲、観覧車、吊革 などなど。孫は可愛いのでついついべたべたの句になりがち。帰り道は言葉が幼い。家路とでもすればましになるでしょうか。露天風呂は裸を見せようという魂胆が透けて見えます。飛行機雲は所在無く、観覧車は生活の現場からかけ離れています。吊革はと言えば、つかまる句ばかりで新味がありません。だからといって、作る前に諦めることはありません。「では私が名句を作る」と闘志を燃やすのもよし。「君子あやうきに近寄らず」と避けるのもよし。先日の句会ではこんな吊革の名句が出ました。
青空市に吊革と古雛 今井聖
売り物として詠まれた吊革。発想が新鮮です。鉄ちゃんが買うのでしょうか。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html