俳優・渥美清さんの俳号です。俳句を趣味にしていたことはあまり知られていませんが、撮影を抜け出して句会に出席したこともあるとか。
さくら幸せにナッテオクレヨ寅次郎
最も初期の作品のひとつ。句会に参加したメンバーが楽しみにしていたのが、渥美さんの声。朗々と句を読み上げる声を、惚れ惚れと聞いたそうです。渥美さんは、220を超える俳句を世に残しました。もっとも風天らしい句がこちら。
赤とんぼじっとしたまま明日どうする
Eテレの番組「歳時記食堂」でこの句を取り上げたとき、映画「男はつらいよ」でマドンナを演じた かたせ梨乃さんが、こうおっしゃっていました。
「自分がすごく迷っているような。どうしようもできないな、だれも助けてくれないような。なんかひとりなんだなっていう感じがすごいする」と。観客を楽しませてくれた渥美さんは、決して私生活を明かさない人でした。秘められた渥美さんの素顔。それがこの一句なのです。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html