はるショール「春ショール(春)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

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春ショール芳名帳に屈みたる  藤井あかり「封緘(2015)文學の森」

結婚式に招かれて芳名帳に署名するときの光景だと思いました。名前を書こうとすれば屈まなければなりません。屈めばショールが落ちてきて、書きづらい。墨で汚れてしまいそう、と思って慌ててかきあげます。そんな仕草さえ華やか。式が始まる前の一瞬を簡潔に詠みとめました。

なぜ、結婚式だと思ったのか?春ショールだから。明るい色の春ショールに、お葬式は似合いません。「春なお寒い時に用いるショール。お洒落をかねた美しい色のものなどが多い」と歳時記に。女性が春ショールを纏うときの気持ちは、私には推測することしか出来ませんが、きっと心弾むものなのでしょう。春ショールの下は華やかな外出着。結婚式ならドレスかもしれません。ショールの彩りと芳名帳の白と黒。色彩の配置も見事な一句です。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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