音数によって季語の置く場所が変わります。句会の題が季語だった場合、音数からどんな構成の俳句が詠めるかを考えてみるのも一興でしょう。たとえば四音であれば「や」をつけて上五に。三音なら「かな」をつけて下五に置くことができます。
では「蚊」のような一音の季語、「花」のような2音の季語ならば?
蚊が一つまつすぐ耳へ来つつあり 篠原梵
叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな 夏目漱石
青空や花は咲くことのみ思ひ 桂信子
本丸に立てば二の丸花の中 上村占魚
なるほど、工夫次第で上五、中七、下五どこにでも置けそうですね。
続いて三音の季語。
犬の仔を見せあつてゐる日永かな 石田郷子
先述のように「かな」をつけて下五に置くのが定石。日永とは、春分を過ぎて夜よりも昼のほうが長くなり始める頃の季語。ゆったりとのびやかな気落ちになります。
四音ならばやはり上五に。「や」をつけて春光や、遠足や、たんぽぽや、という具合。
たんぽぽや見えてゐて声届かざる 一人
五音なら上五にも下五にもぴったりはまります。
春ショール落ちやすきゆゑ華やぎぬ 佐藤麻績
大阪の灯のいきいきと春ショール 西村和子
6文字だと、うーんだんだん難しくなってきました。花種蒔く(春・草花の種を蒔くこと)を例にとれば
花種を蒔きてこころは沖にあり 鷲谷七菜子
もともとは「花種蒔く」でひとつ続きの季語ですが、助詞の「を」をいれて分割するという奥の手が飛びだしました。
さあ七文字の季語。例えば「片栗の花」。これはもう中七しかないでしょう。と思ったら歳時記に用例があまり見つかりません。皆さん苦労しているんですね。
片栗の花ある限り登るなり 八木澤高原
上五から中七にまたがって使用しています。なんとか中七に置いて作ってみたのがこちら。
ゆふぐれは片栗の花揺れやすし 一人
8音以上となればどこに置こうとも思い切りが必要です。上五字余りの例をひとつご紹介しましょうか。季語はバレンタインデー、8音です。
バレンタインデー心に鍵の穴ひとつ 上田日差子
いかがでしょうか。通常は俳句を作るとき内容をまず考えるはず。実はこのようにリズムから入ることも可能なんです。レッツ・トライ!
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