壜にさすすすき電気のとほる家 鴇田智哉「エレメンツ(2020)素粒社」
透明なガラス壜。光を受けるすすき。電気のとほる家には灯りが。光、光、光。そして透明感。一見意表をつくとりあわせでありながら、違和感なく読めてしまうのは、質感が統一されているから。色数を抑えたコーディネートのような品のよさ,気持ちよさを感じます。こうしたスタイリッシュな印象は鴇田さんの句によく見られるもの。さすすすきと平仮名を連ねた表記もよく工夫されています。一般にS音は、さらさら、スースーなど流体の動きに用いられることが多いもの。ここでも、さの後にすが三回続くことで音もなく滑ってゆくような独特の効果をあげています。「さす 動詞」+「すすき 名詞」でありながら一語のオノマトペのように感じられるのです。すべてが滑らかで、透明で、輝いている一句です。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html