レタス苗三十本を千鳥植 竹村翠苑「豊かなる人生(2020)朔出版」
千鳥植とは、種を二条以上で栽培するとき、千鳥の足跡のようにずらして違い違いに植えることだそうです。日照や通風をよくする効果があるのだとか。この句はまず、千鳥植という用語が目を引きます。千鳥足なんて慣用句がありますから、意味を知らなくても何となく様子が想像できます。三十本という分量は自家用でしょうか。この具体性は俳句というよりも、日記のよう。わびさびなどの風流を重んじるのではなく、写生に徹しているだけにリアルさを感じます。夏になると、作者のお宅ではきっとレタスサラダが食卓にのぼるのでしょう。後書きに俳句の師である小澤實さんがこう記しています。「あらためて竹村翠苑さんの生業の農事の句が、すばらしい。農の句が、つくりごとではない。本気なのである」
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html