どことなくささくれてをり竹夫人 片山由美子 竹夫人とは竹でできた抱き枕のこと。抱きかかえて寝たり、もたれたりして涼をとり、くつろぎます。俳人には人気の季語ですが、一般の知名度はいまひとつ。おそらく竹夫人ときいて、何のことかわからない方が大半ではないでしょうか。日陰の身で鬱憤がたまっているのか、掲句ではささくれていま...
俳句の作り方
俳句の作り方の記事一覧
吊革のしづかな拳梅雨に入る 村上鞆彦 体の部分を詠み込むことで、句に肉体感覚が備わります。例えば海につかる足指なら爽快さ、時によっては不安。抜歯の後の歯茎なら痛みという具合。他人に伝えにくい感覚をリアルに表現することができるのです。掲句もその一つ。用いられているのは「拳」という言葉。ここでは怒りに似た感情が表出されて...
玉虫のごと褒めらるる死後ありや 小島健 タマムシ科の甲虫。紅紫色の太い二本の筋が縦に走り、全体に金緑色の金属的な光沢を放っています。この玉虫の翅を装飾に用いたのが法隆寺に伝わる玉虫の厨子。私も見たことがあるのですが、流石に色あせて往時の輝きはありません。しかし出来上がったばかりであれば、どれほど輝いていたことか。金...
月の客吊り玉葱をくぐり来し 小川春休 玉ねぎの収穫時期は5月から6月。茎を長く残した玉ねぎを十個から十二個ずつ束ね、風通しの良いところで一〜二ヶ月乾燥させます。これが吊り玉葱。糖度が増し美味しさがアップするだけなく、長期保存が可能となるそうです。 掲句の吊り玉葱。農家の軒先を想像させます。煌々と月の照る晩、吊り玉葱を...
俳句で食べ物を詠むときは、美味しそうに詠む。これが鉄則です。それにはどうしたらいいか?次の句を参考にして、考えてみましょう。 扇風機うどんを滑る生卵 小野あらた 本当に美味しそうです!うどん屋さんの厨房でしょうか。大釜でぐらぐらと湯を滾っています。暑いところに火を扱っているのですから、汗が滴ります。古ぼけた扇風機がぶ...
三人の一人は無言ソーダ水 西村和子 季語には、年代を表すものがあります。掲句はさしずめその典型。青春性を強く帯びた季語が用いられています。 最近あまり見かけなくなったソーダ水。コーラやジンジャーエールに舞台を奪われています。ですからこの句を見ると、今のことではなく昭和の話かなと思います。ここからは私の妄想です。きっ...
旅人の木という影の涼しかり 対馬康子 一般に海外詠は難しいとされます。季節感が日本とは違いますから季語の使い方が困難。かの加藤楸邨がシルクロード吟行で季語を見つけるのに苦労した、なんて逸話を聞くと余計に躊躇してしまいますよね。でも、挑戦してみたい。そんな時にそなえて、成功する秘訣を掲句から探ってみたいと思います。 ま...
例えば、桜を歳時記で調べるとたくさんの傍題が載っています。時間に関するものを拾い上げると、朝桜、夕桜、夜桜。同じ花が、時間を違えるだけで別の季語になってしまう不思議。それぞれの情緒の違いを味わってみてください。 花見より帰る近所の夕桜 岩田由美 こちらの句は夕桜。朝桜、夜桜と季語を入れ替えてみましょう。ほらね。やっ...
火が紙にくひ込んでゐる麦の秋 鴇田智哉 麦の秋は、麦が黄金色に熟して取りいれ時になる初夏のこと。掲句は、紙が燃え上がる瞬間。しかしなぜ麦の秋なのでしょうか。燃え尽きてやがて灰になってしまう紙と、黄金色の実りを刈られてしまう麦畑。最後の輝きという点で共通しています。私が思い出したのはゴッホ最晩年の作品「烏のいる麦畑」...
続々と生まれる季語。角川歳時記、最新版にはブーツなどの新しい季語が収録されています。また言葉としては昔からあったけれども、意味するものが変わってしまっている場合もあります。掲句の鮓など、さしずめその典型でしょう。 回転寿司注文タッチパネルの起動に間 池田瑠奈 ここで描かれているのは、あの回転鮓。誰でも知ってはいても俳...
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